無口な先生は駄目ですか? Chapter 1-④
ヒザの具合は相変わらず一進一退が続く。
確かに整体でO先生の施術後は、少し良くなる。
ただ、良い状態は長続きしない。
一晩寝ると翌日には元の状態へ逆戻り、を繰り返す。
そのまま治療を続けて4ヶ月目くらいだった頃。
仕事の都合で予約日時を急に変更した。
整体院の受付に着くと、何かいつもと様子が違う。
O先生は女性の施術をやっている最中。
相も変わらず機関銃トークと笑いが受付まで響く。
しばらく待つのか。仕方ない。
辛抱して受付で待っていると、若い男性の先生が登場。
「今日はボクが担当します」
20代半ば位で、O先生よりも随分若い。
イケメンではあるが、どちらかといえば職人風。
真面目で、口数が少なそうとの第一印象だった。
最初の問診時にカルテを見て二言三言質問をされる。
しかし、その後は一切会話はなし。
第一印象通り、黙々と施術をされる真面目な先生。
途中で言われるのは次の決まり文句のみ。
「強すぎないですか」(X先生)
「大丈夫です」(私)
「はい・・・・・・・・・」X先生)
「・・・・・」(私)
「・・・・・・・・・・」(X先生)
・・・・以下2度繰り返し
ただO先生よりも施術の腕はよいのだろうか。
先生の動きに敏感にイタ気持ちよさが増す。
何よりも、施術後に体が何故かビビッドに軽い。
何年ぶりかで感じたこの軽さ、爽快そのもの。
話し方の先生のときとは施術後の感覚が違った。。
次の予約を取る際に、X先生が質問する。
「またO先生に戻しますか?」
「いえ、別にこのままでいいですよ」
「そうですか。それじゃボクが担当します」
その時、真面目なX先生の表情が少し緩んだ。
無言の60分は味気なさも残る。
ただ、話は別のところで学べる。
整体院はひざや股関節を治すためにある。
原点を忘れてはいけない。
この日から、X先生が私の担当となった。
整体院は口と耳のスキルが大事 Chapter 1-③
6回回数券を購入して、O先生の整体を続けていた。
通院のたび、O先生の軽妙なトークは相変わらず炸裂。
この整体院は、男性客が3割、女性客が7割程度。
圧倒的に女性客の比率が高い。
女性の先生も何名か在籍しているくらい。
男の先生に体を触られるのを嫌がる若い女性にも配慮。
気兼ねなく通院してもらえる仕組みは大手ならでは。
そんななかO先生は、トークの巧みさゆえであろうか。
女性の固定客が多いのが特徴。
8名くらい在籍している男性の先生の中でもダントツ。
施術の効果より、いつの間にかO先生の話に魅了。
先生の話の内容を楽しみに通院していた。
実は私はどちらかというと口下手。
特に女性との話のきっかけ探しを相当苦労するタイプ。
それだけに、どこからトークの題材を探しているのか、
どのようなタイミングで話を切り出すのがよいのか、
O先生から施術を受けながら学んだことは多い。
まさに私のとっては、話し方の先生になっていた。
6回の回数券を3回目に購入するとき、ふと気づく。
そういえば、ヒザや体の状態はあまり良くなってない。
否、どちらかといえば悪くなっているではないか。
いけない、ことばや話にだまされてはいけない。
整体院に通う本来の目的はヒザや股関節を治すため。
女性とのトークの技術を高めるためではない。
そこでO先生からの機関銃のようなトーク展開前、
「実はヒザのここが痛む」
「歩くと左の股関節がうずく」
困っている体の状況を先手を打って相談。
O先生は私の話をよく聴いてくれた。
話の量はいきなり50%に削減。
「どうですか」「痛みは取れましたか」
私からのプラスの返答がでるまで、
時間ぎりぎり、もしくは延長して施術。
口だけはなく、耳のスキルも高い先生だった。
大手整体院「Kファクトリー」 Chapter 1-②
まずはどこに相談するのがよいか?
整形外科は名医であっても信用できない。
以前通っていたストレッチの先生に聞いた話。
「整形外科医ほどいい加減な商売はない。
骨を適当に削って、商売になるのだから(笑)」。
そうだ、やはり民間に頼ってみるほかない。
そこで、行ってみようと決断した。
大手で全国展開している整体院「Kファクトリー」。
実は、変形性膝関節症になる前、マラソンに没頭。
レース本番前後にメンテナンスをお願いしていた。
ある程度、治療内容、料金も理解している。
そのうえ全国ブランドであるため、信用できるか。
自宅近くの大宮店に電話で予約を取った。
現れた担当医は小柄な30台前半の風のO先生。
この整体院では先生と呼ぶことに統一されている。
ヒザ・股関節を始め身体の気になる部分を伝える。
O先生は笑顔で診断結果を伝える。
「脳から相当疲労物質が出ている証拠ですね。」
後でわかるが、O先生は大宮店の切り盛りを任される、
会社でいう管理職の先生であった。
一番関心するのが施術の腕よりも患者とのトーク内容。
以前横浜の店に勤務していた、
実は前職歯科技工士だった、
豆腐は万能の日本食だよね 等。
まさに、ドラえもんのポケットのように話題は豊富。
そのうえ話術も非常に巧み。
確かに施術中は微妙な施術で気持ちよい。
しかし、終わってからは何かスッキリとしない。
そのことを正直にO先生に告げてみる。
「週に1度、最低3ヶ月は続けないと完治は難しい」
との鉄板トーク。
ついつい数万する6回回数券を購入してしまう。
変形性ヒザ関節症からの脱出 Chapter 1-①
全ては有名な整形外科主治医からの一言で始まった。
「MRIの画像から、1年前から悪化しています。
次は人工関節を入れることを覚悟してください。」
信頼して主治医にかかってきたのに正直裏切られた。
この先生のベストセラー本の帯にある文字
「あなたも●●体操を続ければ、きっと膝は良くなる。
人工関節はもういらない」は何と虚しく踊っているか。
所詮本は名前を売り、患者を増やすためのツール。
ビジネスとしてよく考えれば当たり前のこと。
心底で主治医は売名行為はしないと信じたかった。
今さらわれながら、情けない限り。
よし、こうなったら自力で何とか復活してやる。
私の中の闘志がふつふつと湧いてくる。
人間には大いなる潜在能力が眠っているはずだ。
こうして私の脱出劇のストーリーは始まった。
小学生のときに何度も聴いた巨人の星のテーマ曲が
脳内で何度も何度もリフレインする。
「勝利をつかむその日まで・・・」